寝屋川生野病院 ワイヤー抜き忘れはなぜ起こったのか
寝屋川生野病院でワイヤー抜き忘れの医療事故。
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20190404/k10011872781000.html
ワイヤーの先端が心臓に突き刺さり患者死亡。
この事件には、寝屋川生野病院と明生病院、2つの病院が関わっているようです。
寝屋川生野病院は、医療事故を認めて、謝罪文を発表しているそうです。
医師・臨床工学技士・看護師など、カテーテル留置の処置に関わっている人は、 何故この事故が起こったか、イメージは出来ると思います。
一般の人はどうでしょうか。
めっちゃ、疑問を感じるのではないでしょうか。
ワイヤー=針金? じゃあ、なんで体に残っていたのに気が付かないの?
去年の11月にカテーテルを入れて、その時から今まで何もなかったのか?
ワイヤーが残っていて、生きていられたのはなぜか?
そもそもカテーテルを入れるときになんでワイヤーが必要なの?
脚の付け根の静脈からカテーテル入れて、 なんでワイヤー=針金が心臓に刺さるのよ?
めばるなりに解説していきたいと思います。
ただし、カテーテルを入れた時の状況や、患者さんの状態、
カテーテルの種類、カテーテルを入れた医師の事(外科か、内科か、経験年数など)
の詳しい事は公表されていないので、あくまでも一般論と思ってください。
まず、カテーテルとは何か。
持続的に栄養剤を点滴注射する必要がある場合、普通の点滴ではできません。
採血の時に刺すような、前腕部などの四肢にある血管からは、栄養の濃い点滴は出来ないのです。
太い静脈に細い管を入れて、濃度の濃い点滴を行います。
四肢の血管を「末梢静脈」、足の付け根や首、鎖骨の下に通っている太い血管を「中心静脈」と言います。
今回、カテーテルを入れた場所は、 鼠経部(足の付け根)の中心静脈、ということになります。
カテーテルとは「細い管」を意味します。
そして「柔らかい管」です。
数か月以上に及ぶ長期間、点滴を継続するとしても、管は頻繁に入れ替えることは出来ません。細く柔らかい管を足の付け根の静脈から入れて、先端を心臓方向に向けて20㎝入れておくのです。
管の細さは数ミリです。
カテーテルを突き刺しているところから感染を起こすと、敗血症を起こします。カテーテルが入っているところは、厳重に消毒し、最近をブロックする専用のテープで保護します。
問題は、 カテーテルを入れる時の手技です。
前述したように、カテーテルは「細く柔らかい管」です。そのままの状態で血管に入れることは出来ません。
穿刺部(刺すところ)を局所麻酔し、十分消毒する。
↓
注射針のちょっと長いやつ、を刺して入れたい血管に到達させる。
↓
注射針の内部にワイヤーを通して、血管に入れていく。(30センチ位)
↓
注射針をどける。
↓
カテーテルの先端の穴(孔)に体の外に出ているワイヤーを入れる。 ワイヤーに沿わせるようにして、カテーテルを血管に入れる。
↓
最後にワイヤーを抜く。
最後にワイヤーを抜く、これを忘れていたわけです。
体の中に入れるワイヤーの長さは30センチ位ですが、 体の外にある程度の長さが無いと、カテーテルを入れることは出来ないので、 ワイヤーの長さは1mくらいあります。 (商品によって違う)
よって、ワイヤーは、カテーテルの内部を通った状態で体内に残っていたわけです。しかし、期間が経つにつれ、血流に乗って、血管の中を進み心臓の内部に到達したのかもしれません。
では、なぜワイヤーを抜き忘れたのか。
ワイヤーが残っていることになぜ気が付かなかったのか。
レントゲン検査での見逃しか?
カテーテルを入れた後は、適切な場所にカテーテルが入っているかを確認するためレントゲンを撮ることが普通です。
ワイヤーは金属です。大変細いのですが、レントゲンに写ります。
カテーテルを入れた後に、確認のレントゲンを撮らなかった。または撮っても見逃していた可能性があるのかもしれません。
もし、レントゲンを撮っていないとしたら、その理由は分かりません。
ワイヤーが無いことに気づかない?
後かたずでワイヤーが無いことに、誰も気が付かなかった。
普通は、ワイヤーを回収した時に収納する筒がありますので、後かたずけの時に、医師か看護師がワイヤーが無いこと(回収されていないこと)に気が付くはずです。
カテーテルを入れた時の状況や、患者さんの状態、 カテーテルの種類、カテーテルを入れた医師の事(外科か、内科か、経験年数など)が分からないので、もっと細かい事故原因があるのかもしれません。
しかし、この2点を確認してれば、 ワイヤーを抜き忘れていたとしても、直ぐに発見できた可能性は強いように思います。
亡くなられた患者さんは、大変お気の毒です。
医療者の未熟な手技・確認不足・慢心による医療事故。被害を被る患者さんが出ないことを願ってやみません。